第88回アカデミー賞の長編アニメーション賞が「インサイド・ヘッド」に決まり、ピクサー・アニメーション・スタジオ作品としては実に8度目の同賞獲得となった。1995年の「トイ・ストーリー」以来、常にCGアニメ表現を革新し高い評価を得てきたピクサーの最新作が、この「アーロと少年」だ。
ファンタジー作品の多いピクサー作品にしては珍しく、冒頭でSF風の前提が示される。6500万年前に巨大隕石が地球に衝突せず、恐竜たちが絶滅していなかったら――つまり、歴史のイフを起点にした、恐竜たちが文明を持ち言葉を話すパラレルワールドが舞台、というわけだ。
主人公のアーロは、大型草食恐竜アパトサウルスの家族の末っ子で、臆病な11歳。家族は畑で収穫した作物をサイロに貯蔵しているが、そこに忍び込んで盗み食いしていたのは、なんと人間の少年。そこから紆余曲折あり、アーロは川に流され見知らぬ土地でひとりぼっちになるが、くだんの少年が窮状を救う。こうしてアーロは少年と友達になり、家を目指して冒険を始める。
ピクサーがモデルとなる動植物や静物、自然の景観などを徹底的にリサーチする姿勢は良く知られるところ。本作のキャラクター造形でも、各種の恐竜の体形を忠実に再現しつつ、各キャラの性格に合わせ顔や体のパーツをデフォルメして魅力を高めた。さらに、アパトサウルスの四肢の動きに象の歩き方を反映させたり、Tレックスの疾駆をカウボーイが乗った馬のギャロップに似せるなど、親しみやすさを狙った工夫も目を引く。